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2017年6月17日 (土)

「ヨーヨー・マと旅するシルクロード」を観てきました

6月10日、「ヨーヨー・マと旅するシルクロード(原題:The music of strangers)を観てきました。

映画の内容は、2000年に【音の文化遺産】を世界に発信するためにヨーヨー・マ氏が立ち上げた「シルクロードアンサンブル」(Silkroad enssemble)の活動の様子を取り上げたドキュメンタリーです。

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ヨーヨー・マ氏は、世界的なチェリストでありながらその地位にとどまることなく、革新的な音楽の創造に取り組んでいます。それは、

「伝統は革新から生まれる。文化が塗り替えられなくなったとき、伝統は死んでしまうだろう」

「文化にとって重要なのは伝統を守り抜くことよりも物事を生かし続けること、そして進化し続けること」

という氏の伝統に対する考えそのものから来ているのだと思います。このアンサンブルには、シルクロードに点在する様々な民族音楽の楽器なども参加しており、当初、これら民族音楽の保守的な人たちからは反逆者扱いされることもあったそうです。

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しかし今では、中国琵琶のウー・マンさんや

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バグパイプのクリスティーナ・パトさんらは、伝統文化の擁護者となっているのだそうです。

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数年前にお邪魔した東京根津あたりの飴細工屋さんが「飴細工は廃れゆく文化」であると自ら語れていましたが、新しいものとの融合がなければ本当に廃れてしまうかも知れません。しかし、別の文化に触発されれば伝統を生かしつつ発展していくことは可能なのではないでしょうか。

また、中国の伝統文化である影絵の職人が、「準備に3日もかかるのに、お金になるのは興行があるその日のみ。10人に教えたが、タクシードライバーの方が金になるので、後継者は一人も育たなかった」と嘆きます。「収入=日々の生活」という課題も重くのしかかります。

伝統文化を伝えるためにもう一つ重要なことがあります。それは、「平和」です。アンサンブルのメンバーには、イランやシリアといった政情不安を抱えた国の出身者がいます。彼らは、祖国を離れ里帰りもままならないのです。イランの伝統楽器「ケマンチェ」を弾くケイハンさんは、祖国で開く計画だったコンサートが“諸般の事情により”中止になったそうです。こうした国々では、伝統文化の抑圧も行われているのです。「祖国のため、伝統文化のため」との想いはいとも簡単に権力者から抹殺されるのです。

「故郷で起きた悲惨な出来事は音楽で表現できない。音楽で空腹は満たせないし、銃弾を止めることもできない。自分に何ができるのか」と自問自答する言葉が強く心に突き刺さります。

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私の知人であるロックバンド【紫】のドラマー宮永英一氏は、軍歌が兵士を鼓舞し戦場へと駆り立てたことを例にとり、「音楽で平和を追求する」と言います。確かに、私の大好きなヨハンシュトラウスのゆったりしたワルツを聴けば平和な気持ちになるはずです。ただし、世界各地でテロを行うような人たちにとっては、憎悪の対象であろう西洋の音楽を聴いて平和な気持ちになるとは考えられませんが。

映画のエンディング近く、サン・サーンスの名曲「白鳥」が演奏されます。しかし、ステージで舞うのは、黒い衣装に身を包んた黒人の男性。これが意味することってなんだろう?と考えたところ、「見た目ではなく、想像せよ」ということなのではないかと思いました。他にもいろいろな解釈があるとは思いますが。(この映像はYou tubeで見ることができるので興味のある方はどうぞ)

この映画は、伝統文化とは、平和とは、そして音楽とは、様々なことに想いを巡らせるきっかけを与えてくれました。これは、私の凝り固まった考え方(古い伝統)に革新的な息吹を与えてくれたのかも知れません。

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